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飲食店営業許可だけ?バー開業の注意点

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バー(Bar)や居酒屋を開業するときには、保健所から飲食店営業許可を取るだけでなく、警察への届出が必要になることがあるので注意しなければいけません。

警察への届出が必要な場合

警察への届出が必要な飲食店は、主にお酒を提供する店で、夜0時以降の深夜にも営業するお店です。

バーはお酒がメインの飲食店なので、夜0時以降に営業したいときには警察への届出が必要になります。この届出は、正式には「深夜酒類提供飲食店営業営業開始届出」と言います。

バーが0時前でお店を閉めることは少ないと思いますので、多くのバーがこの届出をすることになります。

そして、この届出は警察に提出するものなので、保健所とはまた違ったルールを守る必要が出てくるため注意が必要です。

「どんなルールがあるの?」と不安な方も多いと思いますので、バーの開業でよく問題になる点を中心に解説します。

用途地域

まず最も問題となるのが「用途地域」と呼ばれるものです。

普段聞き慣れない言葉ですが、実は私たちの暮らしている場所には、「商業地域」とか「住居地域」といった用途地域が定められています。

この用途地域の中には、深夜酒類提供飲食店を営業することができない場所があります。

そのルールは各都道府県の条例で定められており、例えば東京都では「住居専用地域」と「住居地域」では深夜酒類提供飲食店の営業はできません。

他の都道府県でもおおむね同様のルールがあるため、物件を選ぶ段階でこれを確認しておかないといけません。

物件を借りていざ手続きをはじめてみたら、「実は深夜酒類営業ができない場所だった」なんてことになりかねないので、ここは物件選びの重要なポイントです。

不動産屋さんの中にもこのことを知らない業者さんもいますので、「前のお店もバーだったから大丈夫ですよ!」なんて言われて借りた後になって、実は「前の店は届出をせずに違法営業をしていただけ」なんていうケースがありますので「用途地域は何ですか?」と尋ねてみるとよいでしょう。

自分で確認する場合には自治体の都市計画図を見れば確認できます。

インターネット上で確認ができる自治体も多いので、例えば「中央区 都市計画図」などで検索してみると簡単に確認できます。

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用途地域NGだと、どんなに内装を注意しようが、深夜酒類営業ができません。物件を借りる前に、用途地域は必ずチェックしましょう!

ここで用途地域について詳しく解説!

用途地域についてより詳しく解説します。細かい話なので興味の無い人は読み飛ばしてください。

東京都では、東京都風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例第15条で、「住居集合地域」では深夜酒類提供飲食店を営業できないと書いてあります。

「住居集合地域」とは、

  • 第一種低層住居専用地
  • 第二種低層住居専用地域
  • 第一種中高層住居専用地域
  • 第二種中高層住居専用地域
  • 第一種住居地域
  • 第二種住居地域および準住居地域

のことを指します(同第3条第1項1号)。

また、神奈川県の場合には、神奈川県風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例第16条で、「住居専用地域及び住居地域(規則で定める地域を除く。)」、と規定されています。

ここで言う「規則で定める地域」は、神奈川県風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例施行規則第3条で、「商業地域の周囲30メートル以内の住居地域」と定められています。

この営業禁止地域にはお店の一部でも引っ掛かっているとダメなので、建物が複数の用途地域にまたがって建てられている場合は要注意です。

客室の面積に注意

深夜酒類提供飲食店には客室の面積に関するルールがあります。

それは客室が2つ以上あるときには、1つの客室の面積が、最低でも9.5㎡無ければいけないというものです。

このルールが意外に曲者で、けっこうやっかいなんです。

もちろん単純に、個室があるため客室が2室あって、個室の面積が9.5㎡に満たないという場合も、壁を取り除いたりしなければ深夜営業ができないために厄介ですが、実は我々の常識からすれば1室に見えるお店でも、法律上は2室以上になってしまうということがあります。

それを説明するためには「見通しを妨げる設備」に関するルールを説明しなければなりません。

ややこしくて大変なんですが大切なところなのでしっかり説明しますので、特にあまり広くない店舗での開業を考えている方は、少し我慢して読んでみてください。

見通しを妨げる設備

深夜酒類提供飲食店のルールには、「客室の内部に見通しを妨げる設備を設けないこと。 」というものがあります。

これは神奈川県をはじめとして、千葉県や埼玉県では、「1室の中のどこにいても、1室のどこでも見える」という意味とされています。

他方で東京都では原則として「客室内のどこか1箇所から全体が見えれば良い」ということになっています。ただし、店舗の構造などによってはこの通りに取り扱われない場合もあります。

通常の感覚からすると「見通しを妨げる設備」というと、壁とか太い柱とか背の高いパーテーションだろうと考えますが、警察の基準では1メートル以上の高さのものは原則として「見通しを妨げる設備」にあたります。

高さ1メートルのパーテーション、背もたれの高さが1メートルのイス、高さ1メートルの観葉植物などは、我々の感覚からすれば、特に見通しを妨げるとは感じないかもしれませんが、警察の基準からすれば全て見通しを妨げる設備となります。

ということは、バーの客席の真ん中に高さ1メートルのパーテーションが置いてあると、「客室の内部に見通しを妨げる設備を設けないこと。」というルールに違反することになります。

客室を2室に分けて計算

ではどうするかというと、客室を2室に分けて考えるということになります。

これは、お店の形状がコの字型だったり、L字だったりする場合にも同様です。

このようにして、社会常識からすれば1室の客室が、法律上は2室になるという状況が生じます。

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客室に1m以上の高さのものがあったり、客室の形状がL字やコの字形のときには客室の床面積に注意しましょう。特に壁や柱など、後から変更できない部分については注意が必要です。

これがパーテーションのように簡単に移動できるものであれば簡単に解消できますが、しっかりと床に固定された衝立であれば簡単に動かせないでしょうし、構造上客室部分にある柱だったりする場合には撤去することもできず、客室の面積のルールを満たせずに深夜営業ができない、なんてケースもあります。

ただ、実際は警察もこの辺りは柔軟に運用しているようで、「イスの背が少し高め」とか「客室の壁から少し柱が張りだしている」程度であればダメとは言わないケースも多いです。

ぶっつけ本番で警察に書類を持って行くと「ダメだ」と言われてしまうこともありますので、内装工事の段階で警察に一度相談にいくのが無難です。

ただ、警察という役所の性質上、相談してしまうと「ダメ」と言われるが、相談しないでやってしまえば黙認されるという領域も存在するというのが現実なので、何でもかんでも相談した方が得とも言えず、なかなか判断が難しいところでもあります。

深夜に遊興させる場合には特定遊興飲食店の許可が必要

深夜酒類提供飲食店営業の場合には、0時を過ぎてお客に遊興をさせることは禁止されています。

ここで言う「遊興させる」というのは、

  • お店にいる不特定のお客さんに歌、ダンス、ショウ、演芸、映画その他の興行等を見せる行為
  • 生バンドの演奏等をお客さんに聞かせる行為
  • のど自慢大会等お客さんの参加する遊戯、ゲーム、競技等を行わせる行為
  • 舞台装置を設けて不特定のお客さんにカラオケをさせる行為
  • 不特定のお客さんにカラオケを歌うことを勧める行為
  • 不特定のお客さんの歌をほめはやす行為
  • 客にダンスをさせる場所を設けるとともに、音楽や照明の演出等を行い、不特定の客にダンスをさせる行為

などのことを言います。

この点に注意が必要なのは、ダーツバー、スポーツバー、カラオケバーなどです。

ダーツバーについては、「ダーツバー開業3つのポイント」に詳しく書いていますので、こちらをご参照ください。

また、スポーツバーでは、ただスポーツの試合を店内で流すのであれば0時を過ぎても問題はありませんが、積極的に応援を煽るような行為をしたり、応援イベントのような形で営業をすると、「遊興をさせる」ということになります。

カラオケについても、お客が自分で機械を操作して歌う分には0時を過ぎてもOKですが、お店側から積極的に歌うように働きかけたり、店員が手拍子などで盛り上げることは「遊興をさせる」とされます。

また、カラオケについては、店員がお客とデュエットをすると、今度は「接待」とみなされて、0時より前か後かに関係なく、無許可の風俗営業になってしまうのでさらに注意が必要です。

ここに記載したような深夜に遊興させる営業をする場合には、特定遊興飲食店の許可が必要になります。

無許可で深夜に遊興をさせた場合には罰則(2年以下の懲役、200万円以下の罰金)がありますので要注意です。

おわりに

なかなかややこしい話ですが、バーを営業するうえでは最低限知っておかなければいけないルールですので、開業にあたっては必ず理解しておくようにしましょう。

深夜営業に関わる部分については警察の管轄なので、心配なことがあればお店の所在地を管轄する警察署へ相談してみましょう。

ただし、警察は他の役所と比べて冷たい対応をされることも多いので、そのようなことに不安をお持ちの場合には、我々のような行政書士に相談するのもひとつの手です。

実際、「警察に行ったが、行政書士に相談しろと言われて追い返された」、「警察の対応に耐えられないので手続きをお願いしたい」というご相談も多くありますので、お気軽にご相談ください。

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