居抜き店舗での飲食店営業許可取得
「居抜き物件」って?
飲食店を開業するときに、スケルトン状態の物件を借りてオープンしようとするとかなりの費用がかかります。一方で、お店を辞める人も、店舗の什器備品を全て撤去してスケルトン状態に戻して退去するにはそれなりに費用がかかります。
そこで、店舗の什器備品を有償もしくは無償で引き取って開業するというケースがよくあります。
このように什器備品が残された物件を「居抜き物件」と言いますが、居抜き物件を利用した取引は、
- 開店するオーナーは初期費用を抑えられる
- 閉店するオーナーは退去費用を抑えられられる
- 大家は原状回復などのトラブルもなく新しい借り手が見つかる
ということで、当事者にもメリットが大きく、近年は居抜き物件を専門に取り扱う不動産仲介サイトなども登場しています。
居抜きならそのまま許可が取れる?
居抜き物件の場合には、前に入っているお店は飲食店で、営業許可も取得していたということで、「同じ保健所が審査するんだし、このまま許可が取れるだろう」と考えるオーナーさんも多いです。
もちろんほとんどの場合にはそのとおりなのですが、実はそうでないケースもけっこうあるので注意が必要です。
ではどんなところに注意が必要なのか以下に3つ例を挙げてみます。
ドアが外されている
飲食店営業許可を取るための要件のひとつに、「客室と厨房がドアなどで区画されている」というものがあり、お客さんが厨房に容易に立ち入らないようにしないといけないとされています。
多くの場合は、この要件をクリアするためによくバーにあるような、スイングドア(ウェスタンドアと呼ばれることもあります。西部劇によく出てくるからでしょうか。)を設置します。床から天井まであるような大きなドアをつけなくても要件をクリアできるからです。
しかし、たまに許可を取得したあとにこれを外してしまうお店があります。また、外していなくても針金などで開いた状態で固定してしまっていることもあります。
これに気付かずに許可申請を出してしまうと現地調査で引っ掛かってしまうので注意が必要です。
手洗いが外されている
手洗いについても、飲食店営業許可を取るための要件があります。
詳しくは「飲食店の手洗いの位置と数とサイズ」で解説していますのでここでは省きますが、この手洗いも許可を取ったあとに外してしまうケースがあります。
特に厨房内は、調理用のシンクでも手を洗ったりできるというのもあり、外されているケースがあります。また、手洗器自体はついているのに、排水管が外されている、なんてケースもありました。
これも現地調査で間違いなく引っ掛かるので注意が必要です。
用途地域のせいで深夜営業ができない
これは全ての飲食店が当てはまるわけではなく、お酒をメインに出すような居酒屋やBarの場合に問題になる点ですが、用途地域の問題があります。
用途地域については「飲食店営業許可だけ?バー開業の注意点」で詳しく説明していますが、「前のお店がバーだったからバーはやれますよ」と不動産屋に説明を受けていた物件が、前の店は無届で違法営業をしていただけで、物件は住居地域にあって実は深夜営業ができなかったというケースもあります。
これは工事などで何とかできる範囲の話ではないため、物件を借りたあとに判明した場合には、解約して新たな物件を探すか、業態を大きく変更するか、深夜営業を諦めるという選択肢しかなくなってしまうので、「お酒+深夜営業」という業態を考えている場合には特に注意が必要です。
なお、飲食店自体を開店できない用途地域も存在します。
居抜きの場合には以前飲食店があった場所なので原則問題とはなりませんが、もし用途地域が第一種、第二種低層住居専用地域の場合には、飲食店の床面積に一定の制限がありますので、念のため確認してみましょう。
事前の確認が大事
居抜き物件だからといって、必ずそのままの状態で営業許可が取れるわけではありません。
いざ申請という段階で問題に気づいて慌てることがないように、事前の確認が大切です。
用途地域については物件契約前に自治体の役所やウェブサイトで確認をしたり、店舗内の写真や簡単な図面を持って管轄の保健所に相談しに行くことをオススメします。
「開店準備で忙しい」、「保健所や警察の手続きは任せてしまいたい」という方はお気軽にご相談ください。